特別支援学級の担任になったら、知っておいた方がいいことは?
最近の小学校や中学校では、特別支援学校教諭免許を持っていない先生が、特別支援学級の担任になることがあります。
また、はじめて学校の先生になる人が、特別支援学級の担任になることもよくあります。
そこで今回は、小学校や中学校で、はじめて特別支援学級の担任になった先生が知っておきたいことを解説します。
- 特別支援教育の定義
- 特別支援教育の指導形態
- 特別支援教育の対象になる障害
- 特別支援教育の教育課程
- 特別支援教育がよくわかる教育書

特別支援教育の定義
「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです。
平成19年4月から、「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校において、障害のある幼児児童生徒の支援をさらに充実していくこととなりました。
引用:文部科学省ホームページ
パンフレット「特別支援教育」についてこちらからご覧いただけます

特別支援教育の指導形態
通常の小学校・中学校において、特別な支援を要する児童生徒を指導する場は、おもに3つあります。
- 特別支援学級
- 通級による指導
- 通常の学級
1)特別支援学級
障害の種別ごとの少人数学級で、障害のある子ども一人一人に応じた教育を行います。(小学校・中学校)
- 知的障害
- 肢体不自由
- 病弱・身体
- 虚弱
- 弱視
- 難聴
- 言語障害
- 情緒障害
2)通級
通常の学級に在籍し、ほとんどの授業を通常の学級で受けながら、障害の状態に応じた特別な指導を週1~8単位時間特別な指導の場で行います。(小学校・中学校)
- 言語障害
- 自閉症
- 情緒障害
- 弱視
- 難聴
- 学習障害(LD)
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 肢体不自由
- 病弱・身体虚弱
LD・ADHDについては、平成18年度から新たに対象となりました。
3)通常の学級
少人数指導や習熟度別指導などによる授業も行います。支援員がつく場合もあります。
特別支援教育の対象になる障害の定義
1)視覚障害
視覚障害とは、視力や視野などの視機能が十分でないために、全く見えなかったり、見えにくかったりする状態をいいます。
引用:文部科学省ホームページ
2)聴覚障害
聴覚障害とは、身の回りの音や話し言葉が聞こえにくかったり、ほとんど聞こえなかったりする状態をいいます。
引用:文部科学省ホームページ
3)知的障害
知的障害とは、記憶、推理、判断などの知的機能の発達に有意な遅れがみられ、社会生活などへの適応が難しい状態をいいます。
引用:文部科学省ホームページ
4)肢体不自由
肢体不自由とは、身体の動きに関する器官が、病気やけがで損なわれ、歩行や筆記などの日常生活動作が困難な状態をいいます。
引用:文部科学省ホームページ
5)病弱・身体虚弱
病弱とは、慢性疾患等のため継続して医療や生活規制を必要とする状態、身体虚弱とは、病気にかかりやすいため継続して生活規制を必要とする状態をいいます。
引用:文部科学省ホームページ
6)言語障害
言語障害とは、発音が不明瞭であったり、話し言葉のリズムがスムーズでなかったりするため、話し言葉によるコミュニケーションが円滑に進まない状況であること、また、そのため本人が引け目を感じるなど社会生活上不都合な状態であることをいいます。
引用:文部科学省ホームページ
7)情緒障害
情緒障害とは、情緒の現れ方が偏っていたり、その現れ方が激しかったりする状態を、自分の意志ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に支障となる状態をいいます。
情緒障害教育では、発達障害である自閉症などと心因性の選択性かん黙などのある子どもを対象としています。
引用:文部科学省ホームページ
8)発達障害
①自閉症
自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
引用:平成15年3月「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」参考資料
②アスペルガー症候群
アスペルガー症候群とは、知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わないものである。
引用:文部科学省ホームページ
③注意欠陥多動性障害(ADHD)
ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。
また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
引用:平成15年3月「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」参考資料
④学習障害(LD)
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。
引用:平成11年7月「学習障害児に対する指導について(報告)」

特別支援教育の教育課程
- 特別支援学校
- 特別支援学級
- 通級
それぞれの教育課程について、解説します。
特別支援学校の教育課程
- 各教科(国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育、外国語)
- 道徳
- 外国語活動
- 総合的な学習の時間
- 特別活動
- 自立活動
- 各教科(国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語)
- 道徳
- 総合的な学習の時間
- 特別活動
- 自立活動
特別支援学級の教育課程
特別支援学級の教育課程は、基本的には、小・中学校の学習指導要領に基づいて編成される。
特に必要がある場合には、特別の教育課程を編成することができる。
特別の教育課程を編成する場合は、特別支援学校の小・中学部の学習指導要領を参考とし、実情に合った教育課程を編成する必要がある。
この場合、特別の教育課程を編成するとしても、学校教育法に定める小・中学校の目的及び目標を達成するものでなければならない。
- 各教科(国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育、外国語)
- 道徳
- 外国語活動
- 総合的な学習の時間
- 特別活動
- (自立活動)
- 各教科(国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語)
- 道徳
- 総合的な学習の時間
- 特別活動
- (自立活動)
通級の教育課程
通級による指導は、小・中学校の通常の学級に在籍している障害のある児童生徒が、通常の学級で各教科等の指導を受けながら、障害に応じた特別の指導(自立活動の指導等)を特別の指導の場(通級指導教室)で受けることとなるため、小・中学校の教育課程に加え、又はその一部に替えて特別の教育課程を編成することができる。
通級による指導において、特別の指導(自立活動の指導等)を行う場合は、特別支援学校小・中学部の学習指導要領を参考として実施することとしている。
通級による指導に係る授業時数は、年間35~280単位時間(学習障害及び注意欠陥多動性障害の児童生徒については、年間10~280単位時間)を標準とする。
- 各教科(国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育、外国語)
- 道徳
- 外国語活動
- 総合的な学習の時間
- 特別活動
- (自立活動)
- 各教科(国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語)
- 道徳
- 総合的な学習の時間
- 特別活動
- (自立活動)

特別支援教育がよくわかる教育書
はじめて特別支援教育にかかわる先生に手に取ってほしい、おすすめ教育書を10冊紹介します。
特別支援学級の担任になった先生や、通常の学級からの取り出しで勉強を教える先生、通常学級の中でサポートや指導をする先生の味方になってくれる本を集めました。

1)マンガでがってん!はじめての特別支援教育ガイド
苦手さのある子を担任したら、特別支援教育担当になったら、まず読みたい入門書。
マンガで具体場面を紹介しており、読めば納得、理解が深まります。発達障害のある子のつまずきへの理解やサポート方法、周囲の子どもたちの理解を促す道徳授業づくり・資料などを掲載。
2)ゼロから学べる特別支援教育 ―若い教師のための気になる子への支援入門―
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障害者差別解消法が施行され、通常の学級・学校でも合理的配慮や基礎的環境整備が必須のものとなったいま、通常の学級の担任に求められる理解と知識とは?
障害の種別から具体的な授業づくりの方法まで、初めて特別支援教育を学ぶ先生のための、最初に読むべき入門書。
「あせらず自分を信じて1年をかけて」というタイトルのまえがきが優しくて、あたたかいです。こちらからどうぞ
3)通級担当1年目からの疑問にこたえるQ&A
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はじめて通級による指導を担当することになった先生から実際に出た質問にこたえる1冊。
子供が自分の力を発揮し、生活しやすくなるために…通級担当として知っておきたい基礎基本をぎゅっとまとめました。
個別の指導計画や自立活動の学習指導案など実物資料付き。
- 子供の状態を把握するにはどのような方法がありますか?
- 個別の指導計画をどのように作成したらよいですか?
- 多動傾向の子供にはどのような指導をするとよいですか?
など、気になる質問の答えがつまった本です。
「Q.子供にはどのようなかかわり方をするとよいですか?」はこちら
4)[小学校]通級指導教室 発達障害のある子を伸ばす! 指導アイデア
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発達障害のある子は聞く力、見る力、体幹などの感覚がアンバランスであることが多い。
子どもたちの発達を促すため、身体機能を高めたり、学びを支援したり、コミュニケーション力を高めるための小学校通級指導教室での指導レシピを紹介した。
博報賞を受賞した実践。
5)[中学校]通級指導教室を担当する先生のための指導・支援レシピ
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通級指導教室を担当する先生必読の教科書。
通級指導教室の概要をQ&Aでやさしく解説するほか、発達障害のある子への指導アイデアをレシピとして紹介。専門家が今後の展望も語る。保護者・学級担任と連携し生徒を自立につなげる通級担当の仕事がギュッと詰まっている。
6)小学校特別支援教育 指導スキル大全
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基本の学習環境、指示・説明・学習ルール、学習の調整、各教科での支援や外国語、道徳、総合的な学習、特活での配慮等サポート力アップのための必須スキルを80本収録。
指導に困ったときも、ステップアップしたいときも、今欲しい情報がすべて詰まった1冊です!
7)特別支援学級をはじめて担任する先生のための国語・算数授業づくり
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特別支援学級の指導計画づくりを、個々の子どもの実態把握→クラス全体の指導方針立案→年間指導計画づくり、という3ステップで紹介。
モデルケースとして、知的障害と自閉症・情緒障害の特別支援学級における国語・算数の指導計画づくりから授業記録までを掲載した。
- 知的障害・国語 説明文「だれが,たべたのでしょう」(教育出版・1年上)
- 知的障害・算数 数と計算「かけ算(1)」(東京書籍・2年下)
- 自閉症・情緒障害・算数 数と計算「速さ」(大日本図書6年)
など、10個の授業記録が載っています。
1年国語「だれが、たべたのでしょう」の授業モデルケースはこちら
8)通級指導教室 発達障害のある子への「自立活動」指導アイデア110
発達障害のある子への自立活動の指導アイデアを110紹介!
事例は新学習指導要領「自立活動編」の区分や項目に沿って整理し、ねらい、流れ、ポイントを示しました。明日からの指導だけでなく個別の指導計画作成にも役立ちます。
特別支援学級・通級指導教室担当必携書。
9)支援が必要な子どもの心と行動がわかる! 教師のためのサポートガイド
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「どう関わったらいいの?!」。教師になり初めて子どもを目の前にして悩む先生が多くいます。
支援の必要な子どもはどんなことを考えどんな行動をとるのか。
座学だけでは得られないリアルな事例を学んでおくことで、子ども理解と指導、支援の強力なサポートになります。
10)こんなときどうする? ストーリーでわかる特別支援教育の実践
知的特別支援学校を舞台に、若手教師がベテランから助言を受けながら成長していく様子をストーリー仕立てで見せる。
実践に必要な情報が随所に散りばめられ、教師としての専門性の向上、子どもや保護者、同僚との関わり方、アセスメントや指導に役立つ。
舞台は特別支援学校の高等部ですが、小中学校の先生にも学びがあります。
月刊「実践障害児教育」の連載をまとめた本です。
特別支援教育は、正しい知識を持って指導に当たることが大事!
今回は「はじめて特別支援学級の担任になった人」に向けた記事でした。
はじめて特別支援学級の担任になる人は、うまくいかないこともあるでしょう。
でも、それでいいんです。
まわりの先輩に相談してみたり、自分でいろんな指導法を試したりして、試行錯誤してみてください。
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特別支援教育について詳しく知りたい人へ
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